
ソ連時代に軍用機専門の設計局であったスホーイ社が新たに民間旅客機市場に参入するために開発・販売している新型リージョナルジェット機「SSJ100(スホーイ・スーパージェット100)」。同機はグローバル化が進む現在、西側諸国の新型旅客機が台頭するなか低迷の続くロシア航空業界においてロシアの期待を一心に受け開発されている機体です。その為約計画当初から多額の政府補助金や国内へのエアラインへ購入を催促する等、ロシア政府の強い後押しを受けています。
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■数々の新機軸を導入
SSJ100はリージョナル・ジェット市場で先行する「エンブラエル」「ボンバルディア」2社の製品に対抗する為数々の新機軸を導入し開発されることになります。設計作業は2001年11月に開始され操縦桿にエアバス機のようなサイドスティックと飛行操縦装置にはフライ・バイ・ワイヤを採用、操縦室を完全防弾仕様とするなど旅客機参入初とは思えない野心的な技術を投入しています。エンジンは同国のサチュルンとフランスのSNECMAの合弁会社「パワージェット」社が生産する新型エンジン「SaM146」となり、ブリスク技術を使用する事により燃費と整備性能が高いとされています。飛行試験用初号機は2007年9月26にロールアウト。2008年12月24日に初飛行しています。
■国際企業の協力により世界販売を目指す
スホーイ社ではSSJ100の開発、製造、販売にあたって従来のように国内企業だけに頼らず欧米企業の協力も幅広く得ています。部品だけでも電子機器で世界的なシェアを持つ「タレス」を始め「グッドリッチ」、「ハミルトン」、「リーブヘル」など欧米企業がコンポーネントに携わっており、また2007年には旅客機市場に幅広いボーイング社との間に整備員の訓練、部品管理、マニュアル作成等販売に欠かせない支援プログラムの契約を結んでいます。これにより従来のロシア製航空機の弱点であったカスタマー、部品供給が保証されるだけでなくスホーイ社がカバーしきれなかった地域も積極的に販売できるようになりました。
■SSJ100のコクピット

■新興メーカーの出現と数多くの競合機
70~100席クラスの旅客機はボーイングやエアバス社の領域外であるため、長年「エンブラエル」「ボンバルディア」の2社が独占していましたが近年新興メーカーが参入し市場争いが加速しています。新興メーカーのリージョナルジェットとしては中国の「COMAC(中国商用飛機有限公司)」「ARJ21」、日本の三菱重工が手掛ける「MRJ」が後を追う形で開発を急いでおり、この3社の動向が今後注目されています。SSJ100は先行している分、国内外からオプションを含め347機(2011年10月現在)の受注を獲得しており、既にエアラインに納入を開始しています。ただし生産体制に問題があるらしく納入が遅れがちです。
原型初飛行 | 2008年12月24日 |
全長 | 29.87m(以下95型数値) |
全幅 | 27.80m |
全高 | 10.28 m |
乗客 | 最大103名 |
エンジン | パワージェット「SaM146」×2 |
最大速度 | M0.8 |
最大離陸重量 | 49,450kg |
航続距離 | 4,578km |
生産数 | 24機(原形6機含む)量産中 |