a3000205今では世界を2分する巨大メーカーにまで登りつめたエアバスですが、当時は売れ行きが振るわず事業の存続すら危ぶまれていました。1960年代ヨーロッパでは国の垣根を超え新型エアライナー開発への気運が盛り上がります。しかし、旅客機市場ではアメリカ勢に押され各航空機メーカー単独ではとても勝ち目が無く英独仏三国の航空産業の総力を挙げてようやく対抗できるかどうかでした。旅客機共同開発が一般的でない当時、政治的、資金難等多くの試練を乗り越え欧州各国は終結し、グローバリズム象徴としてA300という傑作機を生み出します。


■ヨーロッパのエアバス構想
1960年代当時エアバスとは企業名や特定の機種の名称でもなく短距離で大型のエアライナーの意味であり各国で多様な構想が計画されています。その中でも有力だったのがフランスのジュド社とダッソー社共同のガリオン、ブレゲー社のBr124、イギリスHS社とブレゲー、ノール3社共同のHBN100等があり、その中でも最も実現性が高いとされた後退翼に大バイパスターボファンエンジンを吊り下げたHBN100を叩き台としてA300の開発がスタートします。



■英国脱退でエアバス解体の危機
仏独英3ヵ国による設計思想が折り合わず、当初の計画より機体は肥大化し、最大離陸重量140t級となり開発費も2倍近くまで増大してしまいます。なかなか計画が進まないうちにライバル機のDC-10やL-1011の開発がスタートしてしまいA300は大きく出遅れてしまいます。先行き不透明な中イギリス政府は1969年4月にエアバス開発計画から脱退。A300計画は危機的状況を向かえます。受注が1機も無い中、フランスとドイツ政府は開発継続を決断し全面的に支援することを決定、懸命に営業活動を続け1971年11月エールフランスから16機の発注を受けることに成功します。



■設計思想に光る最新リア・ローディング型翼
実績の無いエアバスがアメリカの独占市場を切り崩すことが出来たのは超音速旅客機であるコンコルドから派生した最新技術を多く投入したことが大きい。採用された主翼はホーカー・シドレー社が9年の歳月を費やし完成させた当時最新のリア・ローディング型翼で、翼正面の圧力変化が少なく衝撃波が立ち上がりにくいのが特徴で、卓越した経済的な性能を有していました。


複数のメーカーが入り混じる割に開発は順調に進み、1972年9月28日、トゥールーズでロールアウト式典で初めて一般に公開、1972年10月28日に原型機のA300B1が初飛行を行い大きな注目を浴びます。しかし実績が無い航空機を購入する航空会社はなかなか現れず、米ライバル会社の熾烈な販売競争も影響し苦戦が続きました。エアバスは粘り強く売り込みを続け、当時のアメリカの4大航空会社の一つだったイースタン航空に無償で貸与すると、三発機のトライスターなどよりも燃費が良く効率的だとの評判を生みアメリカでも売れ行きが伸びはじめます。この頃から欧米以外のエアラインからも受注が来るようになり日本の東亜国内航空(JAS)も1981年にA300B2を就航させています。A300が売れ始めると一度脱退したイギリスが再度参加を申し出てきますが、これにフランスが猛反発。結局ドイツの仲裁もあり、なんとか復帰することになります。



■A300-600
1984年に就航したA300-600は原型型A300と比べて大幅に性能が向上しており、A310を基本としウィングチップを新設した主翼、複合材の使用量の増加、アビオニクス更新などを新技術を積極的に盛り込むことで大量発注につながりました。その後販売の主力がA330に移ったことなどにより、2007年7月11日に最終号機がフェデックスに引き渡され、生産が終了しています。日本で運用されているA300-600Rは日本航空の経営破綻により2011年度中に全機退役することが決定しており、保有する18機はTPGに売却、リースしている4機は返却することになっています。

原型初飛行1972年10月28日
全幅44.84m
全長 53.62m
全高 16.53m
乗客 最大345名
エンジン GE CF6-50エンジン ×2(A300B1)
P&H JT9Dエンジン ×2 (A300B2)
航続距離4,070km (A300B4)
生産数561機(A300)

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青木 謙知

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